解説シリーズ 四半期報告制度


四半期決算の会計処理の概要
第2回:棚卸資産に関連する会計処理 (2008.06.26)
新日本ナレッジインスティテュート
新日本監査法人 公認会計士 友行貴久
新日本ナレッジインスティテュート
新日本監査法人 公認会計士 七海健太郎
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1.原価差異の繰延処理
(1) 概要
 

標準原価計算等を採用している場合において、以下の要件を満たしているときは、発生した原価差異を流動資産または流動負債として繰り延べることができます。

① 原価差異が操業度等の季節的な変動に起因したものであること
② 原価計算期間末までにほぼ解消が見込まれること
③ 継続適用を条件とする
(2) 設例
  第1四半期 第2四半期 第3四半期 第4四半期 年度計
標準原価 12,800 10,800 11,600 12,800 48,000
実際原価 12,400 11,400 11,800 12,400 48,000
原価差異
(-は不利差異)
+400 -600 -200 +400 -
原価差異(累計) +400 -200 -400 -  
    

上記の原価差異が操業度等の季節的な変動に起因したもので、原価計算期間末(この場合、年度末とします)までに解消されると見込まれる場合、

第1四半期においては
(借方) 売上原価 400 (貸方) その他流動負債 400
第2四半期においては
(借方) その他流動負債 400 (貸方) 売上原価 600
  その他流動資産 200  

と、発生した原価差異を繰り延べることができます。

標準原価と実際発生額の相違から原価差異(累計期間)が発生しています。これは、操業度の季節的な変動によるもので、原価計算期間末までにほぼ解消が見込まれることから、売上原価・棚卸資産への配賦等は行わず、流動負債(第1四半期貸方差額)、あるいは、流動資産(第2四半期借方差額)として繰り延べています。

(3) 適用に当たっての留意点
 
① 原価差異が操業度等の季節的な変動に起因したものであること
 

「操業度等の季節的な変動」には、「販売量の季節的変動が大きい業種であること」や、「生産設備の定期修繕による計画的な操業度の低下」などが例と考えられます。これに対して、例えば「主要な売上先が在庫調整に入ってしまった」ことによる操業度の低下は、季節的な変動とは言い難く、かつ原価計算期間末までに解消できるかどうかを見込むことも実際には困難が伴うと考えられます。

発生した原価差異のうち繰延処理の対象となる、操業度等の季節的な変動に起因する原価差異を把握するためには、原価差異を要因別・内訳別に区分して把握することが必要と考えられます。

② 原価計算期間末までにほぼ解消が見込まれること
 

繰延処理を適用するに当たっては、「原価差異が原価計算期間末までにほぼ解消されるかどうか」についての将来予測が伴います。この将来予測を合理的に行うための基礎として、予定操業度および標準原価(または予定原価)が当期の状況に照らして合理的に設定されていることを確認しておくことが必要です。

③ 継続適用を条件とする
 

四半期決算において、原価差異の会計処理は、年度決算と同様の処理(すなわち原価差額を繰り延べない方法)と、これまで説明した繰延処理との、いずれかを選択できることとなっており、いったん採用した方法は継続適用することとなっています。

年度決算と同様の処理を選択した場合でも、四半期決算においては後述2.のとおり、発生した原価差異の配賦は年度決算よりも簡便的な方法によることができます。

なお、繰延処理を選択しても、要件を満たさなくなった(例えば、原価計算期間末までの解消が見込まれなくなった)四半期末においては、年度決算と同様の処理を行うことになります。この場合、会計方針の変更には該当しないと考えられます。

また、繰延処理を適用する範囲として、操業度の季節的な変動が大きい子会社や事業セグメントについてのみ適用する、という選択も考えられます。


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