解説シリーズ 決算対応


決算対応 ― 今すべきことシリーズ
第3回:新リース会計基準 (2009.02.23)
新日本ナレッジインスティテュート
新日本有限責任監査法人 公認会計士 江村羊奈子
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新リース会計基準(注1)は、平成20年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度から原則適用(早期適用も可)されます。四半期財務諸表では1年繰り下げて平成21年4月1日以後開始事業年度から適用が開始されますが、平成20年4月1日以後開始する事業年度からの早期適用も可能であり、多くの会社が早期適用しています。

ここでは、新リース会計基準の論点を改めて確認するとともに、平成21年3月期決算に向けて今準備しておくべきことをチェックしておきたいと思います。

(注1) 企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下、会計基準)および企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下、適用指針)

1.新リース会計基準の論点確認

(1)総括

所有権移転外ファイナンス・リース取引に関する通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理(以下、賃貸借処理)が廃止され、売買処理に一本化されました。当期末から適用する会社は、賃貸借処理を売買処理に組み替える必要があります。

今一度、次のような点を確認しておきます。

リース取引の判定

会計処理の検討

財務諸表に与える影響

四半期でリース会計基準を早期適用した会社も会計処理等の主要な論点について確認

(2)リース取引の判定

リース取引の分類および判定方法については改正前基準と大きな違いはありません。

しかし、ファイナンス・リース取引に該当するか否かでリース資産およびリース債務をオンバランスするか否かが異なり、財務指標等(総資産利益率、流動比率等)への影響も考慮しますとより慎重な判断が求められます。判定の根拠を関連資料とともに残しておくことが必要となりますので、判定根拠と関連資料の整備・保管状況を確かめておくことが必要です。

詳細→

解説シリーズ 新リース会計基準の概要 第1回 4. ファイナンス・リース取引の判定

(3)リース取引の会計処理

所有権移転ファイナンス・リース取引およびオペレーティング・リース取引については、改正前基準からの大きな違いはありません。

しかし、所有権移転外ファイナンス・リース取引は、一定の注記を条件に賃貸借処理が認められていましたが、改正後は売買処理に一本化されました。

【図表1】 リース取引の会計処理

 

改正前

改正後

ファイナンス・リース取引

   

所有権移転ファイナンス・リース取引

売買処理

売買処理

所有権移転外ファイナンス・リース取引

原則…売買処理

例外…賃貸借処理

売買処理

オペレーティング・リース取引

賃貸借処理

賃貸借処理

(4)所有権移転外ファイナンス・リース(借手側)の会計処理

所有権移転外ファイナンス・リースの借手側の会計処理のポイントは以下のとおりです。

【図表2】 所有権移転外ファイナンス・リース取引(借手側)の会計処理のポイント

 

借手

会計処理

売買処理

リース資産およびリース債務の計上価額については、リース料総額の現在価値と貸手の購入価額等(明らかでない場合は見積現金購入価額)とのいずれか低い額(適用指針22)

表示

  • 「リース資産」

    (有形固定資産、無形固定資産それぞれに一括して表示。各科目に含めることも可)(会計基準16、財規23Ⅰ⑧・Ⅲ、財規28Ⅰ⑩・Ⅲ)

  • 「リース債務」

    (入金期限により流動負債または固定負債)(会計基準17、財規49Ⅰ④、52Ⅰ④)

利息相当額の各期への配分

利息法

同上(重要性が乏しい場合)

利息相当額を控除しない方法

または定額法

(5)参照

減価償却方法

  • リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定

  • 償却方法は、定額法、級数法、生産高比例法等の中から企業の実態に応じたものを選択適用

※自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一である必要はない。

賃貸借処理が可能となる場合

    次のいずれかを満たす場合

  • 費用処理基準以下

  • 1年以内

  • 1契約300万円以下

(8)参照

設例による具体的な会計処理の解説⇒

解説シリーズ 新リース会計基準の概要 第2回 5. 借手の会計処理

(5)重要性が乏しい場合

所有権移転外ファイナンス・リース取引では、利息相当額の各期への配分方法は、利息法が原則となりますが、リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額を控除しない方法(注1)または定額法(注2)によることができます。

具体的には、以下の計算式【図表3】によって計算した割合が10%未満である場合に重要性が乏しいものと認められます。判定の根拠が資料とともに残してあるかを確認します。

(注1) 利息相当額を控除しない方法:リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法(この場合、リース資産およびリース債務は、リース料総額で計上され、支払利息は計上されず、減価償却費のみが計上される)(適用指針31(1))

(注2)

定額法:利息相当額の総額をリース期間にわたり定額で配分する方法(適用指針31(2)、59)

【図表3】 10%基準の判定式

未経過リース料の期末残高  

< 10%
未経過リース料の期末残高 + 有形・無形固定資産の期末残高  

分子の未経過リース料の期末残高からは、個々のリース資産に重要性が乏しいため賃貸借処理を行うものや、利息法によっているリース資産に係るものを除きます(適用指針第32項参照)。

その一方で、分母の「有形固定資産及び無形固定資産の期末残高」は、未経過リース料の期末残高と二重にならないよう、所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の期末残高は除くことが適当ですので、二重に計算されていないことを確認しておきます。

(6)10%基準判定式における会計基準適用初年度開始前のリース取引の扱い

ここで、会計基準適用初年度開始前のリース取引についてはどのようにすべきか疑問が生じます。

適用指針第79項により賃貸借処理を継続するリース取引

適用指針第32項では、個々のリース資産に重要性が乏しいため賃貸借処理を行うものは除くとされているだけであり、経過措置で賃貸借処理を継続するものについての言及はありませんので、上記判定式の未経過リース料に含めるのが妥当ではないかと考えます。

賃貸借処理を継続するリース取引が重要性の判定式でどのように扱われているかを確認しておきます。

適用指針第78項により売買処理するが利息相当額は定額法を採用したリース資産

これについても、第32項では言及されていないため、定額法を採用しているものは上記判定式の未経過リース料に含めるものと考えます。

利息相当額は定額法を採用したリース資産が重要性の判定式でどのように扱われているかを確認しておきます。

(7)新たなリース取引を行って10%を超えた場合

適用指針設例5には、以下の二つの方法が記載されています。

すべてのリース取引を利息法で処理する方法

新たなリース取引のみを利息法で処理する方法

②は、重要性の判定式において、利息法で会計処理したリース資産に係るものは除外して判定するため、従前簡便法で処理していたものを継続しても、10%基準には抵触しないこととなるため認められていると考えられます。

なお、①の方法では過年度のリース取引について簡便法と利息法による損益の差額が生じるため、過年度損益修正として特別損益へ計上することとなります。②の方法によった場合には生じません。

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