シリーズ 業種別会計の基礎 ― 路線バス業(2009.05.23)
1.はじめに
バス事業は、バスにより旅客を運送して運賃収入を得る事業です。主な事業として、決められた経路を決められた時刻表にて運行する路線バス業が挙げられます。路線バスは、公共性の高い社会インフラであり、公営によるものもありますが、民営も競合する形で併存します。民営で路線バス業を主な事業として上場している企業は数社であり、鉄道会社の子会社または非上場のバス会社が多数です。
本稿では、シリーズのねらいに沿って、
路線バス業の事業内容、市場規模、業界環境など
路線バス業の業務の流れと内部統制の特徴
路線バス業の会計処理と表示の特徴
について解説します。
2.バス事業の事業内容と経営環境
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(1)バス事業の法律上の分類
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旅客自動車運送事業は、タクシーおよびハイヤー業も含め、道路運送法3条により、以下のとおりに分類されています。バス事業の経営主体は民営、公営があり、同エリア内で競合することも少なくありません。
種類(例示) 事業の定義・形態 旅客自動車運送事業 一般旅客自動車運送事業 一般乗合旅客自動車運送事業(路線バス・高速バス) 運行時間と経路をあらかじめ定め、不特定多数の旅客を乗り合わせて運送する。エリア内を運行する路線バス、高速道路等を経由し都市間を結ぶ高速バス。 一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス) 一個の団体等と運送の契約を結び、車両を貸し切って運送する。旅行会社等が集めた旅行者の団体を運送する貸切バス。 一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー・ハイヤー) 使用する車両は乗車定員が10人以下の自動車を利用して運送する。タクシー・ハイヤー事業。 一般乗用旅客自動車運送事業(個人タクシー) 一般乗用旅客自動車運送事業のうち、事業の許可を受けた個人のみが自動車を運転して運送する。 特定旅客自動車運送事業(スクールバス) ある特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送する。
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(2)バス事業の市場規模
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①一般乗合旅客自動車運送事業
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路線バス業の輸送人員は、マイカーの普及と反比例する形で一貫して減少しています。事業者数は増加していますが、規制緩和による新規参入は少なく、大手バス会社の分社化などによるものが多くなっています。営業収入は、過去には2年ごとに運賃の値上げが認められていたため、輸送人員の落ち込みに比べれば、減少は少なくなっています。しかし、値上げも限界があり、平成4年度の1兆2,332億円をピークに減少に転じています。
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②一般貸切旅客自動車運送事業
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輸送人員は、平成2年度をピークにいったん減少しましたが、平成11年度から再び増加に転じています。その背景にあるのは、旅行業者が貸切バスをチャーターして運行する(例えば東京~大阪間)、いわゆる「ツアーバス」の増加です。路線バス業者が運行する高速バスと外観上は大きく異なりませんが、貸切バス業者は路線バスの種々の規制を受けないため、最少催行人数を設け、予約申し込みが少ないと運休するなどで、不採算な運行を回避することができます。このため、路線バス業者による高速バスより運賃を低く設定でき、利用者の増加につながっています。
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(3)業界環境(規制緩和)
- 平成8年12月、行政改革委員会規制緩和小委員会の提言を受けて、バス業界では規制緩和が進んでいます。
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①一般乗合旅客自動車運送事業
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平成14年2月に規制緩和が行われました。その主な内容は以下のとおりです。
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a.需給調整規制が撤廃され、一定の安全基準を満たせば新規参入が可能となりました。
b.休止・廃止等の市場撤退については許可制から届出制に変更されました。
c.事前に許可を受けた上限の範囲内での運賃変更は届出制となりました。
一方、国の補助対象路線が広域的・幹線的路線で一定の条件に合致する路線に限定されることになり、国庫補助対象路線が減少しました。
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②一般貸切旅客自動車運送事業
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平成12年2月に規制緩和が行われ、需給調整規制による免許制度から許可制度への移行により、新規参入の緩和、また使用車両に係る規制の撤廃などが行われました。
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(4)多角化経営
路線バス業者は路線バスエリアを拠点とした地域に密着しているため、そのメリットを生かし、他の事業を多角的に展開しています。また、路線バス業者は、輸送人員の減少という事業リスクを抱えている中、安定収益源の確保として他の事業にも力を入れています。
多角化の業種としては、ホテル業、不動産賃貸業、不動産分譲販売業、飲食店やスーパーなどの小売業、スポーツ施設の運営、旅行業といった事業を行っています。これらの運営は、子会社を設立して経営効率化を図っています。
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(5)経営課題
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①一般乗合旅客自動車運送事業
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路線バスは、生活に密着した地点に停留所を設置していることにより、利便性は比較的高いものの、都市部では、道路渋滞によるスケジュール運行の信頼性の低下、他の交通機関との路線の競合、他の交通機関より運賃にやや割高感があります。都市部以外の地域では、営業エリアにおける人口の少なさから、補助金を除く本来の収支では事業の維持が困難な状況となり、赤字路線の廃止に踏み切る会社もあります。
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②一般貸切旅客自動車運送事業
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過当競争を背景に事業者の採算確保は厳しくなってきていることから、一部の事業者では、連続勤務による過労運転など、安全管理をおろそかにした無理なコスト削減が行われる例もあり、これを起因とする事故の発生が社会問題化しました。
3.路線バス業の業務の流れと内部統制の特徴
路線バス業の大きな業務の流れは、資金を調達して営業所、バス停、車両などを購入し、運転手を雇用し、燃料を補給して、運行スケジュールどおりに運行させ、乗客を運送するというものです。乗客は、現金、定期券、バスカード、ICカードなどにより運賃を支払うため、現金の納金、定期券収入の期間按分(あんぶん)や、カード乗車の精算などの業務が行われます。
路線バス業の財務報告に関する内部統制には、次のような特徴があります。
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(1)現金等に関する統制が重要であること
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路線バス業では、現金、金券類を取り扱う機会が非常に多いため、盗難リスクや従業員の不正リスクなどへのけん制として、現金回収業務等の統制が強化されています。特に、路線バスの運賃箱からの現金回収は、従業員の手作業が極力生じないように機械化されています。
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(2)予算統制が重視されること
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路線バス業は、マイカーに代替されつつあるものの、人々の日々の生活に利用されるものであり、比較的、年間の収益・費用が見通しやすい事業といえます。また、公的社会インフラとして、採算改善のための運賃改定や赤字路線の廃止を容易にできないことから、非効率な経営による無駄な費用を抑える必要があります。このため、予算と実績を比較して管理する予算統制が重視されています。
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(3)ICカード乗車券の収益認識に係る統制活動と決済受託会社の評価
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最近では、ICカード乗車券による決済が普及してきています。ICカードには多種多様なチャージ方法があるため、精算手続きは、チャージ額や入札および出札情報を取りまとめる業務を外部会社(鉄道会社、バス会社などが出資して共同設立する会社)に委託し、そこで一元管理させる方法が採用されています。ICカードによる売上計上額の算定を外部会社に委託している場合は、受託会社の内部統制の評価が必要になることがあります。
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(4)財務健全性が求められること
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地方公共団体から助成・補助金を受けるため、一般に財務健全性が高いことが求められます。
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