金融商品取引法の施行による、不動産ファンド市場拡大への期待。(2008.01.17)
金融商品取引法の施行によって、短期的にはさまざまな規制によってスピードダウンも余儀なくされそうだが、長期的には不動産ファンド市場を活性化させる可能性も大きい。どのように新しい法律を活用していけばよいのか、弁護士、会計士というプロフェッショナルの立場から、お2人に話し合っていただいた。
- プロフィール
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 三上二郎氏(写真左)新日本監査法人 金融サービス部 シニアマネージャー
公認会計士・不動産鑑定士 竹之内和徳(写真右)
金融商品取引法施行がスキームに与える影響は
| 竹之内 | 9月30日に金融商品取引法(金商法)が全面施行されました。これに伴い、これまでの証券取引法では規制がなかった不動産私募ファンドについてもその対象となることになりました。法律面で、スキームに与える影響はどのようなものがありますか。 |
| 三上 |
不動産の私募ファンドは、主に三つのスキームが用いられてきました。GK(合同会社)とTK(匿名組合)を組み合わせるGK-TKスキームと呼ばれる一段階のスキームのもの。匿名組合を二つ組み合わせるTK二段階スキームと呼ばれるもの。資産流動化法に基づくTMK(特定目的会社)を使ったTMKスキームと呼ばれるものです。 金商法の施行により、特に大きな影響を受けるのがTK型のスキームです。TKの一段階スキームは、これまで証券取引法の規制の対象ではなかったのですが、今回、不動産信託受益権が有価証券に該当するということになりました。これにより、今まで規制がなかったSPC(特別目的会社)やアセットマネジャーも、業規制の対象になりました。 TK二段階スキームについては、これまでも、親SPCの子SPCに対する匿名組合出資は、みなし有価証券に該当していたので、親SPCに対するアセットマネジャーの助言は、投資顧問業の規制が及んでいました。これに対して、これまでは、子SPCに対するアドバイスや運用は、業規制が及んでいなかったのですが、今後は規制対象になります。 |
| 竹之内 | SPCとAM(アセットマネジメント)会社の両方が規制対象になるということですね。となると、SPC自体が金融商品取引業の登録をすることになりますが、実務的には簡単ではないですね。法律面で、そのあたりの回避措置もあるようですね。 |
| 三上 |
金商法の施行で、SPCの自己募集と自己運用という二つの場面において業規制が課せられるようになりました。大きな変化は自己運用です。投資家から匿名組合契約を通じて出資を募った資金を使い、有価証券である信託受益権に投資するという行為自体が、金商法上の投資運用業に該当するということになりました。これにより原則としてSPCも投資運用業者として登録をしなければならないということになったわけです。 投資運用業者として登録するには、取締役会や監査役を設置しなくてはならないといったことや、資本金も5,000万円以上なければならないなど要件が厳しく、とても通常のSPCが満たすことができるものではありません。ただし、この件については例外があります。適格機関投資家等特例業務がそれで、1名以上の適格機関投資家と、49名以下の他の投資家からの出資という形態などの要件を満たしていれば、業としての登録は不要で、届出だけでよいというものです。 といっても、これまでの不動産の私募ファンドのスキームを見ると、適格機関投資家が投資をしていないスキームも多く、適格機関投資家等特例業務だけで解決できるとも思えません。このため、政省令段階で二つほど回避措置が設けられています。一つは、投資運用業登録をしたAM会社に対して、SPCが投資運用業のすべてを委託した場合は、金融商品取引業に該当しないというもの。もう一つは、親SPCと子SPCがあるタイプで、子SPCに対する匿名組合出資者が親SPC一社であって、子SPCが不動産の信託受益権を持っているという場合は、金融商品取引業に該当しないことにするものです。 |
| 竹之内 |
回避措置が明らかになる前は、不動産私募ファンドにとって、非常に厳しくなるという予想もありましたけれど、今のお話では、ハードルは低くはないものの、引き続き継続していくことは可能だということですね。 |
| 三上 |
当初は、今後は匿名組合スキームが成り立たなくなるのではないかという声もありました。しかし、適格機関投資家等特例業務のほか、特例措置が設けられたため、これまでのように匿名組合契約を用いた不動産私募ファンドも組成することができるものと思います。 |
スキームだけでなくAM会社も規制対象に
| 竹之内 | 業登録はなかなか厳しいように思えます。AM会社についても同様に業登録が必要になりますね。 |
| 三上 |
検査マニュアルや監督指針などを見るとわかりますが、かなりしっかりしたガバナンス、コンプライアンス態勢がないと、投資運用業の登録が認められません。形だけでなく、実際の運用も含めた態勢が必要です。また、不動産私募ファンドの投資運用業は、通常の有価証券を取り扱う投資運用業の業登録よりもハードルが高くなっています。すなわち、国土交通省が行っている不動産投資顧問登録のうちの総合不動産投資顧問登録を行っているかそれに準ずる企業であることです。登録自体は絶対の要件ではないのですが、登録した企業に準ずる企業であることは少なくとも求められているので、登録ができるような人的態勢が整っていることが必要になります。 |
| 竹之内 |
コンプライアンス、リスク管理、内部監査等の態勢整備は重要ですね。検査マニュアルや監督指針はさまざまな金融商品取引業者等を対象にしていますが、不動産私募ファンドのAM会社は比較的小規模な会社が多いので、その適用にあたっては工夫が必要でしょう。ポイントを押さえて効果的にその態勢を築くということが大事になると思います。 登録申請を考慮中の会社にとって関心の高い人的構成要件等の具体的な要求水準については、今後受理される会社が増えていくとともに明確になってくるのではないかと思います。 また、投資助言業は投資運用業ほどの態勢は求められていませんが、投資家に信頼される会社を標榜するのであれば、できる限り投資運用業と同程度の管理態勢を目指して整備していくことが必要になると思います。 J-REITでは、業務改善命令なども含めて指摘がありましたね。投資運用業に関しては、証券取引等監視委員会の検査結果が先行事例にもなりそうです。金融庁のいう金融規制の質的向上(ベター・レギュレーション)への取り組みの中で、これまで金融庁とあまり接点のなかった不動産系の会社が、いかに金融庁との対話を充実させるか、ということも重要になりそうですね。 |
| 三上 |
不動産業界で証券取引等監視委員会の検査が行われたのは、REITのAM会社しかありません。実態面に関してかなり細かく検査されるようです。不動産関係の投資運用業者に行われる検査も、同程度のものになる可能性はあると思っています。 |
